シャルマの未来予測 を読んでみて 6
第六章は【産業政策】
投資が製造業・最先端技術・社会インフラに向かっていれば成長への吉兆だが、不動産などに向かっていれば悪いバブルでしかない。
新興国の成長要因は第一に製造業で、農村部の貧困層がシフトしていけるのは比較的簡単な衣料、そして工業へとステップアップしていく。
例えば、
・中国・タイの成功…製造業に注力
・インドの失敗…製造業のフェーズをスキップして、サービス業やハイテク産業を育てようとした
インドはハイテク産業に力を入れているイメージだったが、比較的教育レベルの高い層を生み出せはするものの国民の大多数を占める教育レベルの低い層の雇用や生産を生み出せていないのだという。
ここまで読んでみて、国際競争力を決める要因の一つが労働生産性で、そうすると労働生産性下げる働き方をしている&させている側もなんかおかしいよね、と思います。
シャルマの未来予測 を読んでみて 5
第五章は【地政学】について
貿易による経済発展には3つのフェーズがあり、
1,近隣諸国との自由貿易協定による活発化
2,経済大国間の交易ルートに乗ること
3,国内の第2都市の発展
1の好例はドバイなどで、排他的だが資源を持った国(サウジなど)との国際的なハブになっており、安全と自由によって外貨を集めている
2はベトナムやポーランドなど。大国間の海路の導線上にある国はそもそも有利で、政治的に安定して、開かれた国であることをアピールしていくことが重要である。地中海ルートでかなり有利な位置にあるアルジェリアやスーダンは、政治的に安定していないので素通りされてしまう
3は交易拠点となった1都市に富が集中すると内陸部・農村部との格差が拡大し、結局政治経済的に成長の限界を迎えるということ。高速道路の整備などが重要になってくるため、やっぱり政治の良さが肝となる。
地理的にも政治的にも恵まれて成功したケースとして最初に思い浮かんだのは中国の深センだった。深センしか知らなかったけど、中国は他にもこういった第2都市をうまく発展させているらしい
シャルマの未来予測 を読んでみて 4
第四章は国内経済への【政治介入】について。政治介入は経済面での悪い兆候であり、主に国民の目先の支持を集めるために行われる。
指標としては財政支出の対GDP比で、高い国はロシアやブラジル、インドなど。低い国は韓国台湾などだそうだ。
悪いとする根拠として、政府主導の投資は無駄が多い(=GDPの上昇に寄与しにくい)ことを挙げていた。
お役所仕事=責任の所在が曖昧、ニーズにマッチしない などのイメージはなんとなくあったので、このあたりはすんなりイメージできた。
ところでこの本では、様々な国の歴史から良し悪しの分析を行っているので、失敗事例がよく出てくる。そこに上がる国、だいたい決まっているような…。そして日本はめったに上がらない。これはなかなか凄いことなのでは。
シャルマの未来予測 を読んでみて 3
今日は第三章、【格差】を読んだ。
格差社会で起こる富の再分配が経済に与える影響、国ごとの億万長者の数と総資産の保有比率などに言及している。
不平等が大きければ経済成長が阻害される。その理由はまず、高所得者比率が増えるとの「限界消費性向」低下すること。そして再分配施策を求める声や大衆の反感によって資産の国外移転が発生すること。
良い億万長者と悪い億万長者があり、前者は生産性の高いビジネスでの成功者(例えばハイテクや消費財など)後者はそうでないもの(原油や鉱業、不動産など)。レントシーキング産業というらしい。民間の調査でもロシアやサウジアラビアなどの産油国で腐敗の度合いが高く、不平等であったとのこと。
億万長者の行動が経済全体の方向性を示す風見鶏のようになっていく。
悪い億万長者の話、会社という組織でも現状維持を目指す人と創造的破壊による成功を目指す人の衝突ってあるよねと感じた。
会社もまた小さな社会なので、「現状維持からしか富を得ることができない」人が跋扈するようになったら腐敗した国と一緒なので、さっさとやめたほうが良い。一般社員は不平等社会の貧困層と同じなので、ずっと居ても何もいいことはないし、転職は亡命するよりずっと簡単だ。
合わせて読んでおきたい本
「組織の不条理―――なぜ企業は日本陸軍の轍を踏みつづけるのか」